富士川 住民ら森林再生へ

2011.12.20 asahi.com
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 ■富士川 住民ら、森林再生へ
 荒れた森林を再生しようと、富士川町の住民グループ「ますほ里山暮らしを学ぶ会」が、新たな間伐の手法「皮むき間伐」に取り組んでいる。木の皮をむいて立ち枯れさせるだけ。誰でも簡単にできるといい、学ぶ会は間伐した木材の利用先も探っている。
 「倒れまーす」。11日、富士川町小室の山林。注意を呼びかける声が響く。
 ヒノキが1本切られるたびに木々の間に日光が降り注ぐ。「森のなかは気持ちが良く、遊ばせてもらっている感じです」と学ぶ会の会長山際真理さん(41)。
 この山林は、近くに住む80代女性の所有。20年間は手つかずという。この日はメンバーと一般の計約20人が30本を間伐した。
 学ぶ会は2年前、山際さんたち主婦らが「身近な自然を大切にしていこう」と設立。町内外のメンバー約10人が、自分の子どもを交えて活動する。
 学ぶ会によると、町内も林業者の高齢化などで放置された人工林が目立つ。伸びた枝葉が日光を遮り、動物が食べる木の実や下草が育たない。それが鹿などが人里に下りて畑を荒らす一因にもなっているという。
    
 そんななか目をつけたのが「皮むき間伐」。樹木が水を吸い上げる春先から夏にかけ、皮をむいて水の通り道を断つ。すると木は枝葉が落ちて乾燥していく。幹は水が抜けて軽くなり、伐採して運びやすくなる。
 やり方はこうだ。根元の周りにのこぎりで深さ数ミリの切れ目を入れる。そこから上に竹や金属のへらを差し込み、樹皮を数センチめくる。あとは端をつかんで引っ張ると、高さ数メートルまで樹皮がめくり上がる――。
 「特別な技術は要りません。女性や子どもでも簡単にできます」と山際さん。むいた皮の裏はたっぷりと水を含んで光り、参加者はみなびっくりするという。
 静岡県富士宮市のNPO法人「森の蘇(よみがえ)り」が提唱し、約5年前から普及を進める。大西義治理事長(48)によると「きらめ樹(き)」の名で、23都県で実施されているという。
         
 学ぶ会も大西さんから教わり、一昨年6月から町内の民有林で活動を開始。十数回にわたり計100本以上を皮むきしてきた。数年以上かけて倒木を待つこともできるが、1年~1年半後に切り出している。
 間伐材は近くの登り窯でまきに使ってもらうほか、富士川町青柳町の昌福寺に卒塔婆(そ・と・ば)の材料として納めようとしている。節は多いが問題はないといい、年約600枚の需要を見込む。岩間湛教住職(40)は「以前は輸入材でしたが、すでに県内産に切り替えた。これから町内の材で供養できれば意義あることです」と話す。
 日本の木材自給率は26・0%(2010年)。輸入のため海外の原生林が切られている。学ぶ会の山際さんは「地元の木材を使うことは日本の森を、そして世界の森を守ることにつながる。私たちの活動は小さいが、少しでも広がっていけば」と話している。


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