2011.11.28 神戸新聞NEWS
姫路市が市有林で間伐した木を運び出し、売却する取り組みを進めている。森林を保全して災害に備えるとともに、自主財源の確保につなげる試みだ。木を効率的に搬出するための作業道を整備し、“もうかる林業”を目指す。(田中陽一)
姫路市安富町末広の市有林で、全長約1キロの作業道づくりが進む。高さ15メートル超のヒノキを1本ずつチェーンソーで切り倒し、残った根や表土を重機で取り除き、地面をならす。12月中に完成する予定だ。
姫路市は2006年に周辺4町と合併し、人工林の面積が約14倍の1万1千ヘクタールに広がった。このうち約6千ヘクタールは伐採期を迎えた樹齢40~60年の木が占める。これまで市有林で間伐した木は、そのまま山に積み残していた。周辺の私有林では間伐が行き届いていない場所もあった。安価な輸入材などの影響で、木材価格が低迷したからだ。
市によると、1980年代のピーク時には、兵庫県内でもスギの丸太(直径14~22センチ、長さ4メートル)が1本平均4万5千円で取引されたが、90年代後半に1万6千円まで下落。さらに作業道が未整備だったため、搬出費用が木材価格を上回るようになった。
しかし、2009年の兵庫県西・北部豪雨で、荒廃した山のもろさが浮き彫りになった。やせ細った木は根こそぎ崩れ、山に残っていた間伐材も土砂ごと流出。橋脚や欄干に引っ掛かって泥流をせき止め、浸水被害を拡大させたと指摘された。
作業道の第1弾は昨年、8カ月がかりで安富町皆河(みなご)の市有林に整備された。全長1・1キロ。これにより、周辺の2・1ヘクタールで伐採した600~700本を県が整備した兵庫木材センター(宍粟市)に出荷できるようになった。間伐材は約180立方メートルの丸太に加工され、140万円の価格がついた。
初年度こそ作業道の整備費用で赤字となったものの、市によると、今後は人件費などを考慮しても、年間に1立方メートル当たり2千円前後の収益が期待できるという。
「財源が生まれれば、新たな森林保全事業も考えられる」と市の担当者。作業道と私有林を“支線”でつなぐことも考えられ、「作業道さえあれば利益が上がるというモデルを示し、私有林の間伐を促したい」としている。
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