3月11日に起きたことは、地震と津波という自然災害と、原子力発電所の事故とに分けて考える必要があります。
もし、起きたことが地震と津波までであればどうだったか。それだけでも大変悲惨な出来事ではありますが、おそらく日本は3年以内に復旧したでしょう。底力を、世界に見せつけたに違いありません。GDP(国内総生産)は、今年はもしかしたらプラスになるかもしれないという声も出始めているほどです。来年には、復興需要も含め、リバウンドをしていたと思います。
ところが、原発の事故が、自然災害とは次元の違う話として、世界を凍りつかせています。
これにどう対応していくのか。
これが、将来の、世界における日本のあり方を大きく左右することになるでしょう。ポスト3・11の日本はどうなるかと問われたら、その答えは、原発の事故をどう収斂させていくかに集約されるのです。
そしてこの収斂の仕方で、日本はもちろん、世界各国のエネルギー戦略における原発の位置づけが変化します。
寺島実郎氏(写真:陶山 勉、以下同)
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今、国内の風潮は、「原発は人間の制御の限界を超えた技術だ」となっています。こういった技術とはできるだけ早く距離を取り、主力電源の供給源は自然エネルギーに切り替えた方がいいという意識が、メディアにも国民にも強くなっています。
本当にそうすべきでか冷静に見極める必要があります。
民主党政権は、2010年6月に誕生した際に、新たなエネルギー基本計画をとりまとめました。2030年までのエネルギー長期戦略を明らかにしたのです。
民主党政権は、そのスタート時に、社民党という原発反対政党を連立パートナーとして抱え込んでいたため、原発をどう位置付けるのか、大変注目されていました。
明らかにされた計画は、エネルギー基本計画の策定に携わっていた私も驚くほどのものでした。
電源供給の5割、1次エネルギー供給の26%を原子力でやるというからです。
自民党政権時代のエネルギー基本計画では、原子力の占める割合は、電源供給で言えば3割から4割、1次エネルギー供給では15%です。
民主党政権は、原子力に大きくかじを切ったのです。
理由は環境です。二酸化炭素(CO2)の排出量を1990年比で2020年までに25%削減する。そのためには、原子力に比重を置かざるを得なくなったため、“環境に優しい”原子力を推進することにしたのです。
従来から、原子力推進派には、論拠が2つありました。
1つは、今述べたとおりで、原子力は環境に優しいということ。
それから2つ目はコストが安いということです。もっともこれには、うまく稼働し続けたならばという前提がつきます。
私は、この2つの理由で原発を推進するのは間違いだと、明確に、ずっと語り続けてきました。私は原子力推進派でもなければ反対派でもありませんが、その2点を根拠にするのは間違っている。
なぜならば、仮にチェルノブイリのような事故が起きたなら、原発はもはや環境に優しいどころではなく、また、稼働しない期間が延々と続き、コストも安いとは言えなくなるからです。
今回いみじくも明らかになったように、環境とコストという論拠は、事故が起これば吹き飛ぶ程度のものでしかありません。
推進派は、そういう事故が起こったとしても、それでも原子力に踏み留まるべき理由をよく考えるべきでした。
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