ミツマタ栽培本格化 那賀、食害防止と産業創出へ 【徳島】

200_veAWi0wn徳島県那賀郡那賀町の林業家らでつくる木沢林業研究会が、紙幣の原料となるミツマタによる自然保護と産業の創出を目指す「木沢みつまたクラブ」を結成した。研究会はミツマタが食害に遭わずに育っていることに着目し、2012年から試験栽培を続けている。不足気味だった苗木が十分確保できたことや、用地に協力する地主が増えたことから規模を拡大し、本格栽培に乗り出す。

研究会はこれまで町内の山林6ヘクタールで試験栽培してきたが、新たに8団体・個人の賛同を得て4倍近くの23ヘクタールに面積を広げる。仕入れや山での採取だけでは足りなかった苗も、研究会が独自に栽培することで2万本を確保できた。林野庁の森林・山村多面的機能発揮対策交付金411万円を活用して事業を行う。

研究会がミツマタを栽培する一番の目的はスギやヒノキといった「経済木」をシカの食害から守るためだ。ミツマタはシカが嫌う物質を含んでいるとされ、試験栽培では徳島文理大学の研究室が中心となり、その効能を調べている。

研究会はミツマタが食害予防に役立つことを見越し、栽培規模拡大に踏み切った。食害などで荒れ地となった箇所からの土砂流出を防ぎ、自然を保全する効果も狙う。

紙幣の原料となるミツマタの収穫や皮むきは、林業ができない雨の日でも作業が可能となる。お年寄りも携わりやすい。植苗から3年で収穫できるまでに成長し、一度育った株からはさらに2~3年ごとの収穫が見込まれる。こうした特長から、研究会は山間地の新たな収入源になるとみて産業化も目指す。

1月には国立印刷局四国みつまた調達所(三好市)の職員を招き、ミツマタを蒸して皮を剥ぐなどの加工技術を学んだ。研究会の取り組み拡大を、調達所は「需要はある。増産されることに期待している」と歓迎する。

木沢みつまたクラブの亀井廣吉代表(65)=那賀町沢谷=は「山を救うにはミツマタしかないと考えている。来年はさらに規模を拡大していきたい」と意気込んでいる。

【写真説明】荒れ地にミツマタの苗を植える「木沢みつまたクラブ」の会員ら=那賀町掛盤

徳島新聞