森林・林業再生の取り組み強化をプレハブ建築協会に期待

2012/11/1

プレハブ建築-14654_image

プレハブ建築協会は10月31日、「エコアクション2020(環境行動計画)」の2011年度の実績結果をまとめ発表した。


「エコアクション2020(環境行動計画)」は「低炭素社会」「環境型社会」「自然共生社会」を構築するため2020年度を最終年度とし、環境行動目標、具体的施策、目標値を定めて様々な取り組みを行っているもの。新築戸建住宅では、居住段階におけるCO2排出量を2010年度比で50%削減するとしている。


報告によると、新築戸建住宅の居住段階におけるCO2排出量は前年比で7.4%削減した。太陽光発電システム設置戸数住宅の供給量は58.4%(前年比6.9ポイント増)となり、ヒートポンプ式給湯器、潜熱回収式給湯器・燃料電池コージェネレーション設備を備えた住宅の供給率は82.8%(前年比4.8ポイント増)となった。


また、新築低層住宅の居住段階におけるCO2排出量については、前年比3.7%削減し、既存住宅の居住段階におけるCO2排出量削減では、太陽光発電施設設置工事件数は17,280件(前年比41.6%増)となり、事業活動におけるCO2排出量削減では、生産段階ではCO2排出量は前年比で2.0%増加したが、事務所などの業務部門では事務所床面積当たり前年比9.8%削減した。


同協会では、初年度としては順調な滑り出しとしている。


実績調査の対象になったのは、同協会住宅部会20社のうち部会内に設置された環境分化会参加の10社(旭化成ホームズ、エス・バイ・エル、三洋ホームズ、積水化学、積水ハウス、大和ハウス、トヨタホーム、パナホーム、ミサワホーム、レコハウス)。


◇     ◆     ◇


具体的な数値目標を設置してCO2排出量の削減に取り組むのは結構なことだ。しかし、一つだけ同協会に注文したいことがある。自然共生社会実現への取り組みだ。


ニュースリリースはA4の紙に3枚と少し。主な調査結果として(1)低炭素社会の構築(2)循環型社会の構築(3)自然共生社会の構築(4)化学物質の使用量及び大気排出量の削減――の4項目についてまとめられているが、(3)の自然共生社会の構築については見出しも含めてわずか7行しかない。


これについて、説明した住宅部会環境分科会代表幹事・玉田眞人氏が「難しいテーマで、取り組みが始まったばかり」と説明したように、他の項目が具体的な数値を示して結果を報告しているのに対し、極めてあいまいな表現にとどまっている。この(3)について全文を紹介しよう。


(以下、引用)
(3)自然共生社会の構築
[1]森林生態系の保全に配慮した木材利用の推進
・会員各社は、数年前より木材調達方針(ガイドライン)を策定し、サプライチェーンの協力を得ながら、トレーサビリティや、合法性 の確認、持続可能性の評価を行う体制を確立する等、持続可能な木材の利用を推進している。


[2]地域の生態系の保全に配慮した住宅地の緑化の推進
・2011年度に会員各社が新規供給した建売住宅3,874戸のうち、緑化に配慮した住宅(緑化面積率40%以上)は1,643戸で、供給 率は42.4%となっている。


――以上だ。[2]はともかく、[1]はどう理解すればいいのか。記者はほとんど何も言っていないと理解した。木材の調達方針を策定し、トレーサビリティ、合法性の確認など当たり前のことではないか。「持続可能性」とは、安定的に安い外材が確保できるかどうかということのみに関心がないのではないか思ってしまう。


でないとすれば、もっと具体的に「持続可能な木材利用」の方針を打ち出すべきだ。例えば、政府が打ち出した向こう10年間でわが国の木材自給率を50%に引き上げるための取り組みにどう貢献するかだ。


今回の調査対象になっている企業はわが国を代表するハウスメーカーで、供給戸数は世界的に見てもトップクラスだろう。この10社が危機に瀕するわが国の森林・林業再生に本格的に取り組めば、流れを一気に変えられると思う。各社にはぜひ他のCO2削減目標と同じように数値を掲げて木材自給率50%への取り組みを強化して欲しい。


[2]は、それなりに評価できると思う。しかし、猫の額ほどの庭もない業界を席巻している建売業者とは一線を画すのは当然だし、1区画40坪とすれば、緑化面積率を40%以上にするのは難しいことではない。

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