コマは虫たち こどもも

2012年7月2日

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「一手で優劣が入れ替わる。意外に奥深いんです」

福岡県嘉麻市の永光祐子さん(60)が、ヒノキの間伐材を使った子ども向け将棋「もりのきしょうぎ」のルールを説明してくれた。将棋盤は12マス(縦4、横3)しかなく、積み木のような8枚のコマには、森にすむ虫の絵が描かれている。

対局相手は、近所に住む友人の孫の奥西真人くん(5)。祖父らと毎日のように勝負しているという。慣れた手つきで、「王将」に当たるクワガタを手前中央に置き、その左にテントウムシ、右にトンボ、前にアオムシを配置した。これで準備は完了だ。

永光さんの王将はカブトムシ。普通の将棋と同じでどこでも1マスずつ進める。トンボは前後左右、テントウムシは斜めのみに1マス。アオムシは前に1マスだけだが、相手の陣地に入るとチョウに成って、斜め後ろ以外のどこでも1マス進めるようになる。

先手の永光さんがまず、自分のアオムシで真人くんのアオムシを取り、「王手」をかけた。真人くんはクワガタで応戦。20手ほどでカブトムシを詰ませて「参りました」と言われ、うれしそうな笑顔を見せた。

「もりのきしょうぎ」は、女流棋士の北尾まどかさん(32)がルールを考案したヒット商品「どうぶつしょうぎ」をアレンジしたものだ。

市商工会の女性部長を務める永光さんは昨年2月、隣町で木材会社を経営する荒木光子さん(65)から、「使い道のない小さな間伐材を生かして、どうぶつしょうぎが作れないか」と相談を受けた。

もともと環境問題に関心があり、「遊びながら森林の役割を学んでもらえる」と賛同した。北尾さんも承諾してくれた。イラストは動物でなく虫に決め、3150円と1万円(ヒノキ製の収納ケース付き)の2種類を開発。遊び方と間伐で森を育てる仕組みを説明する小冊子も添え、昨年11月から電話注文やネットショップで販売を始めた。

普及のために「福岡ご当地しょうぎ会」を設立し、県内で開かれる将棋大会などでも紹介している。「遊びながら考える力も養える。木のぬくもりにふれ、森を身近に感じてほしい」

読売新聞


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