タイガーマスクと震災が、寄付文化の転換点となるか?

2011年4月5日

今年は日本の寄付文化にとって、大きな転換点になるかもしれません。

 始まりは、あの「タイガーマスク運動」でした。2010年12月25日、群馬県中央児童相談所に漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人を名乗る匿名人物がランドセルを寄付。これを端緒に、架空の人物名を名乗る多くの人が、児童相談所や児童養護施設へ寄付を行いました。この出来事を通じて「日本の寄付文化の在り方」について議論が巻き起こりました。

 そして2011年3月11日には東日本大震災が発生しました。地震と津波と原発事故という三重苦の災害です。この震災では、当初、被害が軽い地域の市民の間で「自分たちに手助けできることがあまりに限られている」という事実が、自責にも似た「もどかしい感情」を引き起こしました。そんな中で節電や買い占めの防止など「市民一人ひとりが実践できる復興支援」という形が出来上がってきました。その身近な支援方法の一つとして「寄付」の注目度も高まったのです。

 そこで今回の「社会を映し出すコトバたち」は、寄付文化にかかわる注目語をテーマに選びました。最近の寄付文化で何が起こっているのか。注目語を紹介しながら分析したいと思います。

寄付付き商品~価格に寄付金を含める方法~

 寄付文化を知るうえで最も分かりやすい入口は「どのようなお金の集め方があるのか」を知ることでしょう。まずは「募金の方法」に焦点を当てて、注目の言葉を紹介してみたいと思います。

 募金の古くて新しい方法に「商品やサービスの価格に寄付金を含めてしまう」やり方があります(定価に上乗せする方法や、利益から寄付金を捻出する方法など)。このような商品を「寄付付き商品」などと呼びます。

 初期の有名事例には、クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスが1983年に実施した『自由の女神修復キャンペーン』があります。カード利用1回について、1セント分の修復費用を寄付するという内容でした。

 近年の取り組みの中では、食品大手のダノングループが、ミネラルウォーター「ボルヴィック」を対象に実施している「1L for 10L(ワン・リッター・フォー・テン・リッター)」が有名です。ボルヴィックの出荷量1リットルに対して10リットルの水を、深刻な水事情に悩むマリ共和国に提供する(井戸づくりとメンテナンスを実施する)プログラムです。日本では2007年から毎年実施しています。

 環境保護分野で最近注目されている「カーボンオフセット商品」も寄付付き商品の一形態でしょう。カーボンオフセット(carbon offset)とは、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出量を相殺するという意味。温室効果ガスの排出量を低減する事業(植林やグリーン発電などの事業)に対する寄付金を、商品の価格やサービスの料金に含める手法です。

 またこれと似た発想の手法として「生物多様性オフセット」も存在します。植林事業などへの寄付金を価格に含めて集め、その商品やサービスが生態系に与えたと思われる影響を相殺しようとするものです。2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を契機に注目度が高まりました。

さらに注目度が高まった「寄付付き商品」

 最近は、タイガーマスク運動や東日本大震災の影響もあり、新聞などのマスメディアで「寄付付き商品」の話題が頻繁に登場するようになりました。

 例えば今年のバレンタイン商戦では、森永製菓や無印良品などの企業や団体が「1億人のバレンタインプロジェクト」を実施。例えば森永製菓の場合「森永ミルクチョコレート」などのチョコレート商品1箱について1円を、カカオ産地であるガーナやインドネシアを支援するための寄付に充てました(1月1日~2月14日)。読売新聞はこの取り組みを「寄付チョコ」として紹介しました。

日経ビジネスオンライン


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