やわらかな日差しに新緑が映える春。木々の緑を目にすると、国土の3分の2が森林に覆われた日本の良さにふと気づかされることも……。開発などにより、毎年約500万ヘクタール=九州1つ分ほどの面積が減少していると言われる世界の森林資源と比較して、日本の森林面積は過去40年間増加し続けている。その一方で木材利用が進んでいないことから、森林の高齢化や森林の荒廃、林業の衰退が進んでいるという。
また、高齢な木よりも若い木の方がCO2を多く吸収するので、成熟した木を伐採し、若い木を植えることは地球温暖化防止にも役立つ。伐採した木材は住宅や家具などに姿を変えても、CO2は炭素として木材の中に固定されるので、大気中のCO2を減らすことにつながる。木材はいわば「炭素の缶詰」であり、日本の温室効果ガス排出削減目標の3分の2は森林が担っているという。
こうしたことから、家電エコポイント、住宅エコポイントに続く、第3の政府主導のエコポイント制度としてスタートしたのが「木材利用ポイント」だ。先日、平成25年度補正予算の成立に伴って事業の延長が決定し、条件によって期間が異なるケースもあるが、木造住宅等の工事着手および木材製品などの購入期間を、平成26年9月30日まで延長されることになった。
だが、家電エコポイントなら家電量販店で、住宅エコポイントなら住宅展示場や不動産会社でなど、相談や申請窓口がわかりやすかったポイントと違い、どうしたらポイントがもらえるのかなどの認知が今ひとつ遅れているように思える「木材利用ポイント」。林野庁 林政部 木材利用課長の阿部勲さんと、同じく木材利用ポイント推進室 普及係長の山段(さんだん)亮子さんに話を聞いた。
「家電や住宅など一般的な製品に対するポイントと違って、木材利用ポイントは一定の基準を満たす木造住宅や木材製品に対してポイントが付与されるため、どこで、誰に、相談したらいいのかなどがわかりにくいのですが、まずはインターネットで“木材利用ポイント”と検索し、木材利用ポイント事務局のウェブサイトをご覧いただくのが利用の近道。コールセンターや、全国75か所の相談窓口などを照会できます。
3月20日付けのデータでは、住宅の新築工事や木質化リフォーム工事で、合わせて約3万1000件、木材製品および木質ペレットストーブ・薪ストーブで約4100件のポイント申請があったところです」(阿部さん)
スギ、ヒノキ、カラマツなどを活用した木造住宅の新築、増築または購入、内装・外装の木質化工事といったリフォーム、木材製品および木質ペレットストーブ・薪ストーブの購入の際に、木材利用ポイントは付与される。付与されたポイントは、地域の農林水産品や農山漁村地域での体験型旅行、商品券・プリペイドカードと交換したり、木材を使用した別の工事費用に充てるほか、森林づくりや復興支援等に対して寄付をすることもできる。
「40代以上のこだわりを持った方に、木材の良さが見直されているように思います。環境やアレルギーなどが、身近な問題として多くの人の関心を集めていることも、大きいですね。親の世代は“柱はマツ、風呂はヒノキ”というようなこだわりを持って木を生活に取り入れていましたが、その後は価格や技術に目が行きがちになり、木本来の良さが忘れられつつありました。
ここ数年、“木造の家はリラックスできる”“部屋を暗くして、薪ストーブの木が燃えている炎を見ると心が安らぐ”といった声も多く届いており、木が好き、木を使いたい人は、着実に増えていると実感しています。このポイント事業が、木の良さを多くの人に気づいてもらう、きっかけになればと思っています」(山段さん)